今回は、 DIAPASON DR-300 というグランドピアノについてお話しします。

DR300 の全体画像

DIAPASONについて

現存する日本のピアノブランドの中でも、YAMAHA・KAWAIと並んで広く知られています。
このピアノブランドは、いわゆるピアノ造りの第一人者である方が、「こだわりの楽器を作りたい!」との思いから始まっています。

DIAPASONのロゴ

ただ、国内の楽器製造は日本のバブル期に合わせるように最盛期を迎え、その後は徐々に減少してきています。
決して衰退してはいないので、そこは間違えないようにしてください。

YAMAHAを筆頭にKAWAIも、楽器産業としてはそもそも世界のTOP1-2の巨大な企業です。それに比べるとDIAPASONのような楽器メーカーは規模が小さいので、経済の影響をもろに受けてしまいます。

いわゆる”いい楽器”を製造してはいたものの、経営という観点からはあまりよく儲かる仕組みにはなっていなかったようで、現在はKAWAIに吸収され、カワイ内の1ブランドという位置づけとなっています。

これはどのメーカーにも言えることですが、いい楽器を作ることが最大の目標であると同時に、しっかりと利益を生み出していかないと、企業自体が潰れて、ブランドごと、そこで培われてきたものも全部消滅してしまうことになりかねません。

そのバランスを取り続けるのは容易なことではないですが、DIAPASONはかろうじて生き延びている時点で優秀なのかもしれません。

一言で言うと、結構手間をかけて一生懸命ピアノを作ってくれている楽器屋さんです。
買う側にとっては、良いポイントになりますね!


DR300

モデルチェンジを行い、今は「DG-183」にモデル名が変わっていますが、基本的には同様の設計/設計思想になります。
KAWAIに吸収されてから、競合することを懸念したのか、ラインナップをぐっと絞り込んだDIAPASON。
しかし、グランドピアノのトップにこのモデルが紹介されています。
いかにこのシリーズが評価されているのか、求めるニーズがあるか、よくわかります。

このピアノは一般的に言うところの[3型]で、奥行き183cmの家庭用としては広く親しみのあるサイズ感です。
ヤマハではちょうどC3辺りがサイズ上での同等のラインナップとなります。

譜面台の装飾が特徴的でもありますが、特注によって仕様を変更することが出来るようです。
実際、グランドピアノの場合は譜面台を魅せる、というような使い方はあまり機会が無いので、楽譜を置いてしまうと隠れてしまいます。
場合によっては装飾の無い平面の方が、楽譜に書き込みやすいなどの利点があるかもしれません。

その他、グランドピアノの3本の足元にさりげなく金属で装飾があるのが特徴ですね。DR300の鍵盤

鍵盤の材質は、人工の象牙白鍵/黒檀調黒鍵を使用していますが、過去には特注で天然象牙/天然黒檀にすることも可能だったようです。
今現在、当店でご紹介中のDR300は黒鍵/白鍵とも、今は大変貴重な天然素材のものとなっています。
アイボリーホワイトのような自然な風合いが高級感を感じさせてくれますし、何より手指にやさしい触感が最高です。


●音に対するこだわり

 ・総1本張り弦

このピアノの最大の特徴はこの【総1本張り】の調弦方法を採用しているという事です。

DR300の総1本張り弦の高音部

一般的に多くのピアノが採用しているのは、中音~最高音までは1本のピアノ弦をピアノの奥の方でピンに引っ掛けて折り返し、2本分とする調弦方法になります。
この方式だと、場所によっては隣り合う別の音を1本のピアノ弦が共有することになります。
もちろんしっかりとそれぞれの音程で響くことは可能ですが、わずかに影響しあうことは避けられない為、音に濁りを含んでしまいます。

そういう部分を排除するためには1本ずつ別々に弦を張っていく必要があります。
手間もコストもかかりますが、他にはない澄んだ音がします。

この方式を採用しているメーカーはBösendorfer等が有名です。
DIAPASONと同じように、和音を弾いても濁りの少ない美しい響きがウィンナートーンなどと呼ばれ、その音に魅せられた演奏家が数多くいます。

もしかしたら、そもそも1本の弦を折り返して2本分の弦に使う、というのはピアノ独特ではないでしょうか。
頑丈なフレームに高い張力で張るからそこ出来るのかもしれません。

弦を持っている他の楽器は、ヴァイオリンやギター等、それぞれ別々の太さの弦が1本ずつ張ってありますよね。

 

 ・レンナー社製のハンマー

ピアノのハンマーは、まさに音そのものを作り出す部分です。

DR300のレンナーハンマー
弦をハンマーで打って初めて音が鳴るので、ピアノが音を出す一番最初の瞬間を受け持っています。
その為、素材や製法、取り付けてからの調整によってもかなり音に差が出ます。
レンナーのハンマーと言えばSTEINWAYをはじめ、一流のブランドが採用しているほど、その良さには定評があります。

ここにも、DIAPASONがとても音にこだわっていることが現れています。


●独特な音色

DIAPASON創業当時は、国産で最も純粋な響き、をキャッチフレーズにしていたらしいです。
確かに、仮に総1本張り弦でなくても、DIAPASONのピアノの印象はとてもすっきりした響きだ思っています。

おそらく弦の張り方だけでなく、それ以外の部分も濁りの少ない音を追及して設計されているのではないでしょうか。

普通の調弦方法でも結構澄んだ音がする印象があるので、総1本張りにして、更にしっかりと雑味を削ぎ落し、どこまでも純粋な音を求めたようです。

●将来性について

製造自体にコストと手間暇かけて、かつ弦を1本張りにしているような楽器は、よほどの一流ブランドでもない限り、日本で手に入る家庭用のピアノとしては、これが唯一ではないかと思います。

また、家庭用として購入しうる価格も非常に魅力的なので、コストパフォーマンスの高いピアノだと言えます。

DR300チューニングピン

個人的には、この先ずっとこのモデルを同じような価格で製造し続けていくのは、おそらく難しいように思っています。
また日本ではこのような響きを追及/こだわりぬいて製造してくれるようなメーカーも出ては来ないでしょう。

ある意味希少価値の高いモデルになり得るピアノと言えます。

価値が高まることは、ピアノという楽器の性質上あり得ませんが、比較的中古でもお探しになっているお客様が多い印象がありますし、大幅な値崩れを起こす可能性はかなり低いとも言えるでしょう。


●動画でDIAPASON DR300の響きをお聴きください

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